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Q 子供には,あまり無理をせず,かつ将来の安定が確保されるようなコースもいいのではないかと思っています。代表的な方法が小学校からの附属校入学ですが,それを逃してしまった場合にはどうすればいいでしょうか。

A あまり意欲がない子になるのはどうかと思いますが,堅実さと地道な努力という方面で行くなら,公務員という手があります。上級職や出世さえ望まなければほとんど誰でもなれ,社会的地位は高く,失業がほとんどなく福利厚生完備,住宅ローンに困ることもあまりない夢のような職です。といっても,おそらくご質問の意図には「附属小学校のようなエスタブリッシュメントイメージ」も含まれていると思いますので,そのような点から見た場合,やはり中学受験で附属中学を狙うのがいいのではないでしょうか。

 なお,同様の目的で海外の学校を考える方もおられるようですが,日本の教育課程との整合性があまりありませんし,かえって激しい自己主張と競争の渦の中に飛び込むようなもので,「無理をせず」に該当するとは到底思えません。

Q 図や資料を見てその場で考える発想型の問題が苦手なようです。これでは難関中学は苦しいと思うのですが,よい対策はありますか。

A 「その場で考える発想型の問題」というのは,中学受験の大きな壁になるように見えます。しかし,受験産業の目で見た場合,「発想型問題の壁」なるものは存在しません。どんな問題が出ようとも,あらかじめそれを予測して問題と解答を提供しておくのが受験産業の仕事であり,それができないようでは商売になりません。従って,対策としては,よい塾やよい家庭教師を選ぶ,ということに尽きます。

 実際に問題になるケースの大部分は,「既に塾でやったのに解けない」というパターンです。これは計画的な復習が欠如しているのであって,発想力云々という問題ではありません。

 ところで,実際問題として,中学受験レベルでは,新しい図表を見て,そこから高度な結論を導くことのできるような応用力のある子はほとんどいません。たしかに入試では,「格調の高さ」を狙って発想型と見られる問題がよく出題されますが,初見では難しいでしょう。入試で解ける子は,どこかで似たような図表読解問題をやったことのある子ばかりです。

 この手の問題については,やはり復習を中心にして,問題集や難関中学の過去問,塾の教材を繰り返し復習するのが最短です。一見新機軸問題に見えても,案外難関中学では普通に出題されていたりするものが大部分ですので,やはり情報収集と勉強量が重要になります。

 よく,「応用力」「思考力」「発想力」などと言われますが,ペーパーテストである以上,そのような才能がなくても,学習量でかなりカバーできてしまうのが現実です。どんな知能テストを作っても,解き方を知っている子にはまったく意味をなしません。中学入試も(大学入試も)同様です。やるべきことはただ一つ,緻密な復習によって塾の教材や参考書の内容をできるだけ多く頭に入れることです。

 もちろん,たとえば面積図の応用など,わりと面倒なテクニックを塾の授業で扱ったとして,生徒さんがその回の授業だけでマスターできる保証はありません。忘れてしまうこともありえます。従って,「できるまで反復して教えてくれる先生」が求められるところです。そういう先生が塾にいればいいのですが,そうでない場合には,受験テクニックをよく知っている家庭教師の先生などに依頼する必要も出てくるかもしれません。

Q 地方在住で,首都圏のような一流中学が近くにありません。引っ越しても受験したほうがよいのでしょうか。

A 最近では必要ありません。学校と大学受験は,学習内容,情報,ともに,関係ないからです。地元の,通学負担の少ない学校に行き,受験勉強は独自に行いましょう。

Q 中学受験で失敗すると,引っ越される方が多いようです。なぜですか?

A 小学校でトップクラスだった子が,地元の一般人と同じ中学に行くことの恐れからだと思います。また,親の見栄でしょう。

 見たところ,高級住宅街の人ほど,中学受験で失敗して引っ越してしまうことが多いようです。下町の庶民的な家は,最初から見栄など張っていないので,気にせず地元の公立中に進学します。

 見栄で中学を受験したり,安易に地元をこき下ろしたりして中学受験するのは,子供の精神衛生にも良くありませんから,避けたほうがいいでしょう。

Q 大手の模試の合格可能性判定や偏差値はどの程度信頼できるのでしょうか。

A これは,判定に何を期待するかによります。勉強の進度を知るために利用するのであれば,50%より60%のほうがより勉強が進んでいそうだということは言えます。しかしながら,多くの人が期待するように,受かるかどうかを知りたいのであれば,合格率40%~60%という範囲は,事実上「受かるか落ちるかわからない」ということになり,利用価値は少ないと言えます。一方,合格率が80%以上,および30%以下といった両極の数値の場合には信頼性は高まります。

 さて,では80%の合格率は何かということを考えてみます。これは,受験者の80%がちゃんと受かるわけですから,統計的数値として信頼できることは間違いありません。ところが,よく言われるように,誰が不合格者の20%に入るかについては語ってくれません。

 さらに,大きな模試の問題は特定の中学の出題傾向には対応していません。模試問題は定型的なので,これが解けることは,単に「(特定の塾で)過去に学習した問題を確実に覚えている」ということの証明でしかありません。

 極端な場合,たとえば灘中学などでは,「初見では難しいけれども過去問に酷似している問題」ばかり出題されますので,大手塾の全国標準のような教材よりも,むしろ灘の過去問そのものを覚えてしまい,さらに類題ばかり勉強するほうが効率がよくなります。しかしこういうことをしていては,大手の模試の偏差値は下がってしまうでしょう。

 さらに,母集団が実際の入試と全く異なります。たとえば開成の入試には結局出願しないであろう低得点層も,模試では志望校を開成と記入してしまいます。こういう人は,母集団を変質させ,平均点と標準偏差を狂わせます。ゆえに偏差値も狂います。実際,小5の頃は多くの人が十分に学力の伸びないうちに(つまり玉石混淆のまま)平気で難関中学を志願していますので,判定は下しようもありません。実質的には,相当に高い偏差値をとっていないと,合格の見込みありとの判断はできないでしょう。つまり,小5の偏差値を小6生が使う中学ランク表に適用してはいけないわけです。

 そこで,合否判定に際しては,実際の入試出願者の動きを予想して補正しなければならないのですが,いずれにしても相当の誤差は避けられません。

 従って,大手の模試成績を利用するに当たっては,次のように,条件をかなり緩めて解釈する必要があります。

1 合格率80%の集団内でさらに上位3分の1程度にいれば,その中学はほぼ確実

2 同じ「合格率80%」の人の中でも,中位以下ならあまりあてにならない

3 小6の夏以降の偏差値については,ランク表の当該偏差値帯にある中学を4校ぐらい受ければどこかしらには受かると期待される

4 残念ながら小5以前の偏差値は,入試までに逆転がありうるのであまり参考にならない

5 小6の夏以降の模試偏差値から10くらい引いたレベルが滑り止めになる

 このような形で,おおまかな目安として利用する以外にないでしょう。あとは志望校の過去問を解いてみたり,志望校別にクラス編成をしている塾の内部成績も参照したりして最終決定すべきです。

Q 小6になって偏差値が急に下降してしまいました。なぜでしょうか。また対処法はあるでしょうか。

A 小6になってからの偏差値低下は,ごく普通の現象です。これまであまりまじめに勉強していなかった子の中にも才能のある子はけっこういるもので,そういう子が小6頃に急に伸びてきたりします。小6といえば,多くの子が本格的に学力の伸びはじめる時期です。これ以降,中3頃までに,たいていの子は著しい知能の発達を見ます。

 よく中学受験で,「あまり勉強しないのに受かった」「塾に行かなかったのに有名中学に受かった」という子がいますが,これは往々にして発達段階の問題です。さらに,中学受験が近づくと,まるで別人になったように一生懸命勉強する子もいます。

 従って,偏差値が低下することよりも,それに伴って生徒さんがやる気を無くしてしまうことのほうが重大な問題です。そこでまず,「周囲が頑張っているから偏差値低下はある程度は仕方ない」ことを説得しておく必要があります。

 やる気をなくすと,新しいことが頭に入らなくなります。万一,そのような状況が見られたら,学習の仕方を次のように工夫してみましょう。

(1)解ける問題を必ず一定程度含むようにアレンジする

(2)新しい問題や,解けない問題に出会ったら,必ず一定期間後に復習し,反復によって必ず解けるようにする

(3)計画を生徒さんだけに任せない

(4)塾の宿題が,周期的に復習できるようになっているかどうかチェックし,あまりに不規則なら,塾のカリキュラムの取り扱いについて再考する

 成績を上げる最大の秘訣は上手な復習です。よほど天才的な子でない限り,反復しなければ新しいことは覚えられません。そのためには腕のいい家庭教師が必要になることもあります。このコーナーの他の記事も参考に,工夫してみてください。

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