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Q 「開成に行って東大を目指す」のと,「慶應にエスカレータで行く」のと,どちらがいいでしょう。

A 周囲を見回すとどちらも一長一短があります。「慶應附属を蹴って開成に行き,一浪してもなお東大に落ちて結局慶大に行った」とか,「慶應附属に行ってよしんば東大受験しようとしたが結局エスカレーター進学の誘惑に負けてしまった」とか,そういう例は枚挙にいとまがありません。強いて言えば,次の情報をもとに考えるしかないのではないでしょうか。ちゃんと答えられなくてすみません。

(1) 開成に行った場合,まじめに勉強していれば,慶應義塾大学(医学部を除く)には,わりあい楽に合格できる。

(2) 慶應附属に行った場合,エスカレーターは可能だが,法学部や医学部など人気学部に入れる可能性は少ない。

(3) 慶應で内部進学のための勉強をするとなると,受験勉強にまで手が回らない。

(4) 医学部志望者は,難関慶医をはじめから避けるなら,開成に行って他の医学部を受けるのもよい。

(5) 官界では,どうみても東大が圧倒的に有利である。

 なお,これはあくまで個人的意見ですが,本当に迷うのなら,いっそのこと通学時間の短い方にしたらよいのではないでしょうか。その方が,受験勉強にしろ内部進学勉強にしろ,有利になるからです。そして,そんなゲンキンな決め方が嫌なら,強いて言えば,エスカレーターという逃げ道を自ら捨てて開成に行き,苦労して大学受験をしましょう。高校生の頃の苦労は必ず財産となるはずです。

Q 小6で,地元の国立,私立の中学を受験しようとしています。易しい問題は解けるのですが,ちょっと難しい問題になると全然応用が利きません。どうしたらいいでしょうか。

A 「ちょっと難しいレベル」というのがどの程度なのかが問題なのですが,中学のなかには基本問題さえ解ければ受かるところもあります。そこで妥協するのが一法。しかし,国立大学附属や,ちょっと名のある中学ならば,「差を付けるための難問」が必ず出題されますので,その対策は必須となるでしょう。ところで,ご本人の解けない問題は難問だけではないのではありませんか?つまり,難易を問わず,「新しいことが頭に入らなくなっている」という状況なのではないかと推測するのですが。たとえば社会科の基本事項で,1ヶ月前ぐらいに覚えたことを,今でもちゃんと書けるでしょうか。

 「進歩が止まった」「壁にぶつかった」ように見える原因として最も多いのは,カリキュラムが速すぎることです。自分の吸収速度が追いついていかないと,子供は学習を自動的に拒否しはじめます。さらに詳しく見てみると,次のようになります。

(1) 小6になって中学入試問題を始めると,思いのほか難しいことに気付いてパニックになる。本人もご両親も,これまで順調に来た記憶があって,ついつい元のペースで続けてしまい,適応・消化が不良になってしまう。

(2) 塾などで出される宿題の量が多すぎて,いったん遅れが出ると取り返しがつかなくなっている。

 中学受験で深刻なのは(2)のケースです。塾は中学合格者の平均的なレベルに合わせて,宿題を出します。周囲の学習速度が速いのであり,決して塾が無茶をしているわけではありません。中には,「平均的な中学受験生」についていけない子を対象に,別途補習コースを設けている良心的な塾もあるようですから,そのようなところにご相談されるのもよいのではないでしょうか。ただ,そういう塾はきわめて少数だと思います(補習は労多くしてしかも合格実績に結びつかないからです)。

 そこで,とりあえずすぐにできる対策を書きます。

(1) とにかく反復練習

 どんな難問も答えを覚えてしまえば絶対に解けます。あせらずに,何日もかけて繰り返して解きましょう。飽きたら問題集から類似の問題を探して解く。解けなければ覚える。そして繰り返すのです。そんなことをやっていると入試に間に合わないと思うかもしれませんが,難問のパターンなんてそんなに多くはありません。少数の「差がつくポイント」がネックになっているだけなので,「急がば回れで」,冷静に対処すべきです。

(2) 各科目とも,参考書を1冊,問題集を2冊以内に絞る

 ついついあれこれ手を出してしまいがちですが,志望校に合ったレベルの中学入試問題集に絞って,「とにかくこれだけやろう」と決めるのが最善です。その問題集の問題が全部解けるようになったら,別のものに移ればいいのです。問題集を1冊マスターしておけば,次の本からは苦手なタイプの問題だけランダムに解くだけでも大丈夫です。重要パターンを網羅しないうちにランダム演習に入ってしまうのが,大抵の伸び悩みの原因です。

 くれぐれも落ち着いて対処してください。

Q 小6女子です。成績的には御三家はやや難しいといったところです。出願を前にして,どこに出そうか迷っています。なにかいい判断基準はありませんか。

A これも非常によくあるご質問です。こういう場合,最近では安易に公立一貫校を選んでしまいがちです。が,やはり,従来の公立中学の,看板の掛け替えでに過ぎないことに注意すべきです。

 将来の希望があれば,それに沿った方向で決めればいいのですが,偏差値だけではなかなか割り切れないのが中学受験です。成績の高低に関わらず,実に多様な中学が存在します。入試出願期ですので,本音で言ってしまいます。ズバリ,附属の4年制大学(短大は不可)があるところ,できれば女子大のあるところから選びましょう。その根拠は次の通りです。

(1) 女子の場合には大学受験でほぼ確実に苦戦する。知能面で女子は発達が早く,従って小学校高学年で飽和に達し,高校の頃には伸び悩むケースが多い。たとえば女子校トップの桜蔭にして,その下層部30%は法政,日大,聖心,白百合,学習院といったレベルの大学にすら合格が難しいという現実がある。

(2) 社会が私立中高出身者に求めるのは,「学力」ではなく,「しつけ」である。実際,高校卒業時の学力(大学受験の偏差値)については,御三家を除いては公立高校にさえ見劣りするケースが少なくない。にも関わらず,私立中学はこれほどの人気がある。虚飾といわれようとも,その「付加価値」を最大限に生かすべきである。もちろん,実力が必要ないということではない。

(3) 共学の大学で就職の内定がとれないのは多くが女子である。共学の場合,たとえばある企業に同じ大学から甲乙つけがたい男子と女子の応募者が来たときには,

1 残業などいざというときの時間的融通性,

2 男子は共学でしか獲得できないという意識,

3 採用者数が特定の大学に偏らないようにしようとする意識,

4 腰掛けにされるリスクを避けたいという意識,

 などから,ついつい男子に決まりがちである。女子大のほうが就職は楽と言われる。もちろん女子大によるので注意。

(4) 「付属校」ではなく「進学校」を受けさせようとする親御さんの意図は,ほとんどが医学部受験を想定したものである。ということは,医学部志望でもないのに,女子がリスクの高い大学受験戦争に飛び込むことには,再考の余地があるのではないか。

(5) では医学部を志望するかもしれない人にとってはどうかというと,学校の勉強だけでは全く足りず,結局塾や予備校を利用しつつ自分で勉強することになるので,学習面では進学校か附属校かといった違いはそれほど影響しない。雰囲気の面でも,御三家でなければ,進学校といえど私大文系指向が強く,医学部受験者から見れば,どちらも勉強の刺激がないという点において大差ない。

 このような断定的な書き方をすると,なにかと物議をかもすものですが,決断に要する時間が限られているのであれば,こういう単純な決定もやむを得ないと思います。

Q 「進学校」にするか「お嬢様校」にするかで迷っています。両方受ければいいのでしょうが,強いて言えばどちらでしょうか。

A 「お嬢様」というと,どこか頼りない,単なる虚飾に感じられるかも知れませんが,こういうイメージを甘く見てはいけません。ある意味「東大卒」という肩書も虚飾にしか過ぎないのですから。サラリーマンの方なら皆認識されていることと思いますが,学歴があっても仕事ができず,作業が雑で周囲に迷惑ばかりかける問題児はたくさんいます。一方で,高卒でも仕事が丁寧で,信望の厚い人もいます。

 それでも「東大卒」の肩書がなにがしかのアイデンティティになるように,「私立お嬢様校」「名門」という「ブランドイメージ」はそれ自体一つの意味をもちます。何もアイデンティティがないよりは,はるかに強力です。そして中学受験は,このようなブランドイメージを最も容易に手に入れられるチャンスなのです。1つ上の記事にも書きましたように,女子の場合には,迷うぐらいなら「お嬢様」ブランドの「付属校」を検討されるよう強くお勧めします。

Q 小6の女子です。中堅どころの女子校を志望していますが,塾のカリキュラムがどうも開成向けにできているようなのです。塾を変わるなりした方がいいのでしょうか。

A まず,志望校に適合するクラスがないか確かめた上で,もしないようなら塾を移るのもやむを得ないと思います。ただ,通っておられる塾では,上位クラス以外でも,開成を想定した教材が配られているようですね。塾にもよりますが,こういう場合,生徒さんとご父母の心理が一枚かんでいます。

 下位クラスであっても,下手に平易な教材を用いると,「見捨てられた」「入試に間に合わないのではないか」等の問い合わせ電話が数多く寄せられます。本来ならそこで,塾側が基本の重要さを説くべきなのですが,それこそ説いても説いても親御さんの焦りはおさまらず,クレームが止みません。そして生徒はやめていってしまいます。一方,「これは開成の入試問題なんだよ」と言っておくと,生徒もプライドが満足され,解けもしないのに「いい授業だ」などと評価します。当然クレームも減り,塾側も楽です。これに対して,「もうすこしレベルを下げるべきなのでは」といった問い合わせは非常に少ないのです。

 そもそも下位クラスといえど,開成の合格者数につられて入塾した人ばかりです。「たとえついていけなくても,とにかく一番上のクラスと同じ教育を施してください」……これが彼らの本音です。従って,その意味では需要と供給がつり合っているのです。そういう集団内で,一般の中学に向けた対策を期待するのは難しいかもしれません。

 いずれにしても,限られた期間内で,志望校とかけ離れた勉強をするのは自殺行為です。志望校の入試問題に即した指導をしてくれる塾を選ばれるのがよいと思います。

Q 国語の読解問題が不安定で,最近ではほとんど点が取れません。どうしたらいいでしょうか。

A 国語の読解問題は一見つかみ所がないのでついつい対策がおろそかになり,気がついたときには言語処理能力に混乱が起きていることも少なくありません。対策にはすこし工夫が必要です。

 国語は読解以前に,「文章の内容をしばらくの間記憶している」能力が重要になります。中学入試ではある程度の長さの文章が出題されますので,終わりのほうを読んでいるときに,前半を忘れてしまうと,論旨が見えなくなってしまいます。単純なことですが,ほとんどの場合,これこそが「国語の壁」といわれるものの根底的な原因です。

 試験では,読む際に,

(1) 文章の内容を記憶に刻む

(2) 文章の各部分を関連づける

 というプロセスが必要になります。特に(1)ができないと,いくら問題数を重ねても,点にはなりません。そこで,次のような訓練をしてみるといいでしょう。

(1) 1ページほどの文章を読ませる。

(2) 文章を隠し,そのページに書いてあった内容を,何でもいいから言わせてみる。

(3) その内容について,具体的にどのような表現が用いられていたか(比喩やせりふの内容)を聞いてみる。書かせてみてもよい。

(4) 次に,特定の登場人物や話題を指定して,どのように書かれていたか言わせてみる。

(5) 慣れてきて,内容がおおかた思い出せるようになったら,要約文を書かせてみる。

 このようにして,まずは文章の内容を正確に記憶する訓練をします。ゲーム感覚で行うのがよいでしょう。

 文中の表現を覚えられるようになったら,選択問題の解答を,選択肢を見ずに自分で書いてみるようにしてみましょう。その後,選択肢を見て,自分の解答に最も近いものを答えにするかまたは別の解答がよいか考えます。ともかくしばらくの間は,選択肢を見ずに解答を書く練習をするのが効果的です。

 国語の力は,解く人の語彙力や表現力に大きく依存します。経験的に見て,作文力と読解力は,ほぼ完全に比例します。そこで,自分で解答を作る練習をして,「日本語を使う」練習をするわけです。すると,いろいろな語句に習熟することができますので,試験のときもスムーズに解答が頭に浮かんでくるようになります。

 ちょっと手間がかかりますが,このような形で訓練する以外に,国語の壁を突破する方法はないのではないかと思います。根気よく練習してみましょう。

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