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Q 東大の英語の傾向がつかめません。どのようなものなのでしょうか?

A まず,知識面では,いわゆる受験熟語などのような,文脈から切り離して覚えればよいようなものはほとんど要求されず,

1 文法事項と結びついた定型句(現在完了や比較の決まり文句など)

2 文脈と語感から判断して前置詞などを決定する

 などの,「英語への慣れ」を見る問題が主流です。従って,熟語集よりはむしろ文法書をしっかり読んでおくほうがよいと思われます。

 英文の傾向としては,

1 単語は平易でありながら,抽象的な概念を扱っている

2 心理的に微妙で,英語そのものより内容読解の深さが問われる

 というものなので,付け焼き刃で対処できるものではありません。現代文の学習がものをいいます。

 特に,受験生の要約の成績は惨憺たるものだといわれますが,当学院の内部成績でも,全国模試トップレベル生でもほとんど得点できない様子がうかがわれます。

 方針としては,英文の中の抽象的で興味深い論点がはっきり主張されるように要約するということに尽きます。ただし,この場合,文中の表現を最大限に活かします。でないと単なるでっち上げ答案になってしまいます。

 これについては慎重な訓練が必要になってきますが,いずれにしても,対策次第で,「これはすばらしい」という明快な答案が必ず書けるのだということは,覚えておくとよいと思います。逆に,単に「キーセンテンスと思われる文を2つ探して和訳をつなげる」といった姑息な手段では全く得点できません。模試でのトップレベル生が当学院入会後に内部成績で最下位になることがあるのもそのためです。

 英語に限らず,東大入試が求めているのは,基本事項の暗記はもちろんのこと,それを縦横に使いこなして出題の意図に沿う形にまとめる論述力です。

Q 英文はどの程度意訳していいのでしょうか?

A 文と構文により全く異なります。従って,規則はありません。意訳しなければならない表現もあれば,意訳してはいけない構文もあります。すぐれた翻訳文に触れながら一つ一つ覚えていく以外にありません。この作業こそが受験勉強なのです。

 ただし,最低限満たすべき条件はあります。もし,自分の答案が減点されたら,次のような点を疑ってみましょう。

(1) そもそも日本語として不自然でないか。

(2) 単語や熟語が文脈に合うように訳されているか。

(3) 単語の訳し忘れはないか。

(4) 文法的な修飾関係が保存されているか。

 もちろん,異なる言語間での変換ですから,これらの条件を完全にみたすことは難しいでしょう。しかし,条件をなるべく満たすように考えて訳語を吟味していくと,訳文はかなり狭い範囲に収束してきます。その範囲に収まっていればマル,なければバツです。

Q 東大の地理の傾向を教えてください

A よく,東大地理は常識問題だといわれます。暗記の負担が軽いので,論述力の勝負になります。この論述については,受験生が自分でできる対策はほとんどないでしょう。

 基本事項や常識事項をどんな角度からどのような形式で訊かれても答えられるようになるには,それ相応の訓練が必要です。英文解釈と同様,地理に自信がある人でさえ,「構造平野」「貿易風」といったあまりにも基本的な語を使いこなせないことが多いのです。

 たとえば,ちょっとここで,次の問題を考えてみてください。一見簡単ですが,多くの東大受験生がほとんど得点できない問題です。

 問 中央アジアの隊商路が古くから大山脈に沿って発達した理由を地理的に考察せよ。

 何か思い浮かびましたか? どのくらい書けそうですか? 解答は後で記します。

 東大の論述問題の傾向らしきものをあげると,次のようになります。

1 理解レベルでは,出題者が求めている知的な興味の焦点を把握する努力がなによりも必要になります。

2 表現レベルでは,キレがあり,読んでいて快感を感じるような,明快で的をついた文章を書く練習が必要になります。

3 知識レベルでは,必要な事項が漏れなく,密度濃く含まれていなければなりません。

 それでは,上の問の解答です。設問の意図はいうまでもなく,乾燥地の地理ですが,他にもポイントがあります。「隊商」とあります。「利潤」に注目しましょう。高価なものを運ぶ以上,安全性の確保も必要です。

 答 山脈からの融雪水が得られる扇端湧水帯オアシスとなり,そこでの農牧業人間や馬食糧確保に役立つ。オアシスには都市が発達し,遊牧騎馬民族による略奪を防いで安全確保するための人材設備常駐させることができるほか,市場が形成され利潤を生んだ。

 いうまでもなくピンクの語は暗記事項です。そしてオレンジの語は自分で工夫すべきものです。入試では,ほとんど何もないところから自分で重要語句を思いだし,それを駆使して新しい説明文を書かなければなりません。そのためには,その目的に沿った効率的な訓練が必要です。

Q 今度高3になります。いままで受験勉強らしきことをしてこなかったのですが,一年で早慶あたりを目指して大丈夫でしょうか?

A 大丈夫かどうか考える前に,志望校はできるだけ高くもって,とりあえず目指してみるのは大事です。志望を下げることなんて,願書記入の1秒前になってからでもできます。競争においては,たとえどんな小さな妥協であっても,それをした人から脱落していくものです。ゆえに大事なのは,早期に妥協しないことです。

 さて,現実的な合格可能性を算定するのは困難なのですが,学部を選ばなければ,早慶のどこかに合格する可能性は高いと思います。やってみるべきでしょう。公立高校とのことですが(高校名がわかると話が早いのですが),だいたい次のような手応えをもっています。

(1) 都市部の学区トップ校であれば,努力により,かなりの確率で早慶は合格する。

(2) 学区の二番手,三番手の高校では,周囲の雰囲気に流されないよう自制して勉強すればいいでしょう。

(3) それ以下となると,かなり苦戦します。

 なぜ学区での順位を持ち出したかというと,公立高校の「輪切り」はかなりの精度で行われているからです。つまり,高校が同じなら,どの学年も中学段階で同程度のレベルにあるわけです。そこで,大学受験の「再現性」も高くなります。

 もうすこしたつと,高3生が入試を終えて,合格状況が明らかになります。その人数を見て判断しましょう。もし,自分の高校から早慶にほとんど受かっていないようなら,かなり危険な状況といえるでしょう。逆に,各クラスから4名以上早慶にいっているようなら,希望をもてます。しかしもちろん,油断は大敵です。

Q 将来マスコミ関係を希望しています。特に有利な大学とか,あるでしょうか?

A マスコミは早稲田が強いといわれますが,たとえば民放各局の役員リストなどを見ると,やはり東大万能だなと感じさせられます。文系の世界は基本的に偏差値かな,と思います。

 ところでマスコミに限らず,就職の際に,採用は暗黙のうちに二分されているということは知っておくとよいと思います。つまり,幹部候補者としての採用と,現場労働者としての採用です。よく雑誌などに,「企業に人気のある大学」なる企画が登場しますが,これは往々にして「使いやすい」ということであり,出世させるつもりで採用するときの指標とは限りません。

 マスコミ関係では,もし現場で能力を発揮するのが希望なら,大学はそれほど気にせず,むしろ有力なコネをもって就職してしまうのがよいでしょう。そのあとは実力主義です。しかし,将来的に経営にまで関与することを考えるなら,できるだけ偏差値の高い国立大学を狙うべきです。

Q 文学部は就職に不利なのでしょうか?

A 有名大学なら,学部よりも「大学の名」が効いてきますので,それほど不利にはならないでしょう。また,心理学科では,統計処理や調査の基本を学ぶので就職状況は好調のようです。営業職の実力部隊では,学歴など,ハク付け程度のものがあれば十分でしょう。

 では,人気の事務職ではどうでしょうか。

 一般に,文章の上手い人と,統計処理に強い人が就職に有利のようです。なぜかというと,大企業の事務職では日常的に膨大な書類作成業務が発生しており,販売状況やトラブル処理,取引先との交渉経過など,ほとんどすべての活動を報告書にまとめるからです。従って,数字の処理に強く,また報告書を素早く的確に作成できる人が求められるのです。

 なお,そのような事務処理過程で実績を示した人は,その後,経営分析や人事管理,給与計算など管理業務を任されるに至ります。そして企業は往々にして,このような事務処理能力と大学入試偏差値を結びつけて考えるものです。

 このような業務内容を見るに,有名大学でない場合には,やはり偏差値の高い法学部や経済学部を検討するのがいいかもしれません。

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