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Q 大学を卒業してから東大を受験しようと思うのですが,これも浪人になるのでしょうか? また社会人入試は受ける価値はありますか? 難易度は?

A これは,いわゆる浪人の扱いとはなりません。浪人とは,履歴書に空白期間があるということです。従って,勤続年数を重視する年功序列型企業などの一部では,浪人期間は「なかった」ものとして扱い,低年齢者向けの給与が適用されます。これに対し,大卒者が大学に行っていた時期は,立派な「経歴」「キャリア」と見なされます。従って,普通の予備校生などの浪人と比べ,就職ではその点が考慮される可能性が高いでしょう。ただし,企業の「新卒採用」はほぼ24歳までなので,4年生まで大学に行ってまた別の大学に行くとなると,就職の際に,特殊な条件……教授の紹介状……などが必要になるでしょう。

 さて,社会人入試に価値があるかどうかは,自分が何を学びたいかによって決まります。就職上の価値はありません。大卒者の再受験生には,年齢から見て「新卒採用」という利点が薄いので,競争は緩慢で,大学入試でも,扱いは寛容になります。学士入学,編入学,社会人入試といった制度も設けられています。従って,一般の大学では,大卒者はそれほど不利に扱われることはないでしょう。私大では,主婦などはほとんどフリーパスの感さえあります。実際,倍率は1倍ちょっとです。社会人枠は推薦入試と同じく別枠であり,これを拡大させれば一般入試の偏差値を上げることができます。少子化の折,学費さえ払ってくれれば誰でも別枠で受け入れたいというのが私大の本音でしょう。また,社会人を対象とした大学院枠の急拡大も見られます。

 東大の場合には若干事情が異なります。東大は早期に英才教育をして早期に国に役立つ人材を輩出するという性格が強く,全国から現役の秀才が集まりますから,いわゆる高齢者で「勉強したい」という程度の動機の人は,入試で弾き飛ばされてしまいます。そして,これと連動して,一般の国立大学の教育系学部を中心に,社会人や大卒者への門戸を拡大しています。社会人のために夜間部を設置したりすることも時々新聞などで話題になります。

 また,東大への編入を希望する人の大部分が研究職志望で,実際に東大は研究機関にそれなりのシェアを持っており,まさに「就職の利害」が絡みます。医学部も同じです。従って厳しい競争になるでしょう。

 なお,大卒者であれば大学院を受験されるほうが早いのですが,学科によっては学部から院への推薦枠があることもありますので,学部3年から編入するのが一概に不利というわけでもありません。

Q 入試では字がきれいである必要はあるのでしょうか,その他注意することは?

A 入試で,試験の内容以外に注意すべきこととしては,次のようなものがあります。

(1) きれいに書く必要はありません。しかし,字を読めるように正確に書くこと,論述答案のレイアウトを見やすくすることは,学力以前の基礎的能力です。特に数学の論述答案で,どこから読めばよいかわからないように書き散らしてあるような答案は採点されないおそれがあります。また,消しゴムの使い方が下手で,字が二重になってしまった場合も無効となります。ともかく普通は快適に読めれば十分ですが,漢字の書き取りや英作文などでは,文字の細部にわたるまで正確に書く必要があるでしょう。

(2) 解答欄の外側に何か書いてあると,無条件に採点対象外となります。これは問題冊子の注意事項に書いてあります。理科などでは間違っても欄外で計算をしたりしないようにしましょう。計算は問題冊子の草稿スペースで。

(3) 解答の字数や行数を間違えたために不合格になるケースもかなりあるといわれます。設問の指示をよく読みましょう。

(4) 東大の理社では解答用紙そのものを間違える人がかなりいます。一度に2科目の試験をするので,そっくりな解答用紙を使い分けねばなりません。しかも,解答用紙はあらかじめ科目名のところをはさみで切るようになっているので,あとから科目名だけ書き換えるようなこともできません。

(5) 国立大学は記述問題が多いので,日本語の文法がおかしいとバツになります。内容は合っていてもなかなか得点できないものです。あらかじめ練習を積んでおくのがいいでしょう。

Q 現代文の解答がなかなか合いません。どうしたらよいでしょうか。また,市販の問題集の解答は信用できるのでしょうか?

A 訓練する以外にないのですが,気をつけるべきなのは,ハズした解答を書きまくっていると「間違えるクセ」をつけてしまいかねないことです。そしてなにより,「何がよい解答なのか」が問題になります。

 現代文の解答は,

1 文中の必要箇所の特定

2 それを組み合わせ,あるいは補充して鮮やかな文章にする

 の2段階のプロセスからなります。

 市販の問題集では,解答が本により大きく異なったりします。しかし,解答に用いる箇所の特定までも間違っている問題集はまずないでしょう。市販の問題集を用いて勉強するなら,この必要箇所の特定ができているかのチェック(1のレベル)に用いるべきで,答案の表現力のレベル(上の2のレベル)までは期待しないことです。

2のレベルは,論述指導の専門家に任せるべきです。また,志望大学の教員の考え方や,合格者の答案についての情報も重要です。

 現代文の苦手な受験生はそもそも1の段階で引っかかっているケースが多いので,その意味では市販の問題集でも十分用途に耐えます。

 論述問題をやる前に,「抜き出し」や「文中の語句を用いて答えよ」式の平易かつ客観的な設問(1のレベル)を多くこなして,文章の各部に対する注意力を身につけるのが先決です。

Q 古文単語は一通り覚えたのですが,現代語訳がいっこうにできません。有効な対策はあるでしょうか?

A 難関大学の古文論述問題の出題方針を一言でいうと,「臨機応変の訳語決定力」です。単語帳で覚えた訳語が通用するとは限りません。また,前後関係に応じて適当かつ最小限の語を補う必要もあります。そのため,たとえば一つの作品で訳語を丸暗記するというようなことをしても,応用力がなければ,別の出典では手も足も出ないということになります。

 おそらく内容自体がわからないのではなく,内容を表現する現代日本語が出てこないのではないでしょうか。

 必要なのは作文能力です。これは英語の和訳にも当てはまります。作文を書いて,そこに日本語としておかしな点がないかどうか人に見てもらうこと,また,優れた日本文に多く触れることが最良の対策となります。

Q 調査書は審査されるのでしょうか。されるとすればどのくらい響くのでしょうか?

A 大学により全く異なると思われますが,東大は昔からわりと手間をかけて厳正な審査をする大学なので,調査書についても当然考察対象になると思われます。研究室では,時折,高校ごとの調査書のクセや,高校の先生のタイプが話題になります。出されたものはしっかり見る,が原則です。東大はこんなところなので,調査書を甘くつける高校とか先生とかのデータも揃っています。

 ただし,高校間較差や履修学年を厳密に考量するのは難しいでしょう。従って,極端にいい場合,極端に悪い場合に考査の対象となる,と考えておけばよいのではないでしょうか。

 普通に高校に行っているなら問題はありません。ただし,主要科目に3があると目立ってしまうでしょう。また,実技科目などは「まじめさを見る指標」なので,2以下は危険でしょう。

 通常,遅刻の欄はありません。が,常習の場合には何回かで欠席1日分として扱う高校があるようです。高3での欠席日数は20日以内におさえたいものです。高校によっては高3の12月以降の欠席はカウントしないこともあるようです(特に私立)。

 受験生が特に気になるのは「特記事項」のようですが,通常,この欄は「特になし」になります。また,生徒会長とかをやっても,それほどほめられるわけではなく,「図書委員」「美化委員」などと並んで,単に「生徒会長」と書かれるだけです。従って特記事項に何か書かれるのはだいたい悪い場合と相場が決まっています。次のような場合に問題になるようです。

(1) 校内備品破壊 (2) 登校拒否 (3) 面談欠席(特に高3の進路指導の面談)(4) 授業中の居眠り常習 (5) 行事をことごとく欠席する

 こういう場合には婉曲な表現で何か書かれてしまうこともあります。東大受験生の場合には,案外(3)~(5)が問題になることが多いようです。身に覚えがある場合には,早めに「よい子」になるのがいいでしょう(^^

Q 東大に行くメリットは?

A 特にありません(笑)。以前の記事と矛盾するようですが。将来の志望は大学入学後も大きく変わりうるものです。前には「出世するなら東大は有利」と書きましたが,それは出世したい人の場合に「のみ」メリットになるということです。東大に行ってしまうとサラリーマンになること自体に興味を失うかもしれません。

 これに対し早慶に行けば,周囲の影響もあり,ビジネスマンがかっこよく感じるかもしれません。また,研究者になるとしても,東大には確かに設備がありますが,他大学で個性的な教官と出会うことのほうがメリットになるかもしれません。つまり「有利・不利」(客観)と「メリット」(主観)は違う概念だということです。

 漠然とした,あるいは概括的な主観の次元で多くを期待すれば,幻滅もまた大きくなります。将来にわたって東大卒が有利だという保証もありません。メリットの種類と大きさは,個人の目的と,大学での努力次第でしょう。実社会では成績以外にコネなどの要因が大きく効いてきます。また司法試験についても,予備校が発達し,東大の授業を受ける価値は激減しているといわれます。

 東大出身者がわりと社会で活躍するのは,基本的に真面目で,「日本語による自己表現力」や「状況を理解する力」に優れるためだといわれます。東大の入試問題が出題の意図を汲む力と論述力を徹底的に要求することからも,これはうなずけます。とりあえずそういう目で見てもらえるのは有利かもしれません。

 東大についての個人的な感想としては,学生がお互いにわりと気を使っているので人間関係がスムーズで楽だというのはあります。また,研究については,設備が充実している上に,学生を放ったらかすので,自由度が高い環境だと思います。

 「力だめしに受ける」「とりあえず無難だから東大に行く」ということでもいいのではないでしょうか。

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