前のページ - Page 3 - 次のページ

Q 国公立大をやめて科目数を減らし,早慶専願に変えようと思うのですが。

A このようなケースでは多くの場合,成績が伸び悩んで新しいことを吸収できない状態になっているようです。これを打開しない限り,科目を減らしても何ら効果はありません。科目数が減っても,まだまだたくさんのことを勉強しなければならないことに変わりはないからです。

 経験的に早慶の合否状況を見てみると,途中から私大専願に切り替えた人はかなり苦戦をしています。そういう人の経験談によると,やはりいったん易しい道を選ぶと,ついつい楽な方へと万事シフトしてしまうのが敗因とのことです。一方国公立受験者は科目数が多い分,危機感を強く持って勉強し,結果として私大専願者を引き離してしまうようです。

 そのようなわけで,早慶専願への心理が負のベクトルである限り,たとえ科目を減らしても,得点上昇はそれほど期待できないでしょう。

 では,このような点に注意した上で志願変更するとして,その方針について記します。

(1)東大から早慶専願へ

 年にもよりますが,たとえば早慶の法学系に合格した人の東大合格率は30%以下であるのに対して,東大に合格した人の早慶の法学系合格率は70~80%にも及びます。早慶のほうが入りやすいことは明白ですから,他の国立大学よりも早慶に魅力を感じる場合には,切り替えるのも一つの方法といえるでしょう。

(2)一橋・東工大・京大から早慶へ

 これが問題です。まず,法学系や理学系といった上位学科では両者の難易度は大差ありません。両方受けた人の合否結果からも,たとえば慶応経済と京大法,一橋法は甲乙つけがたい状況です。ですから,上位学科に関しては,早慶は滑り止めにはならないということです。

 次に,商学系,経済系,文学系などについては,たとえば,早慶不合格の人でも,京大や一橋商にはかなり合格している現状があります。国立型の勉強をした人の集団では,どちらかというと,京大や一橋のほうが入りやすい印象があります。従って,経済や商でもいいから国立に行きたいという人にとっては,早慶専願は,選択の幅を狭めるように見えます。

 さらに,理系なら,旧帝大工学部や東工大に,「お買い得学科」が散在することも見逃せません。国立理系受験者は早大法のセンターも狙いどころです。

 以上(1)(2)から,結論として,国立大学に未練がある人は,早慶専願にする前に,一橋や東工大の下位学部を狙ってみる価値があるのではないでしょうか。

 また,以下のような点にも注意しましょう。

(1)国立型でセンター対策をしておけば,早慶のセンター方式にも出願できます。かつては国立型だと科目負担が大きい上に,マニアックな私大専願者と正面衝突するので併願対策も大変でした。しかし最近では私大全般に,センター枠の導入によって,国立受験者が優遇されつつあります。

(2)特に慶応経済・法の難化は,東大の併願先になっているからで,これは結局のところ,国立大学の受験機会が少ないことに拠っています。専願するには「お買い損」な学部といえます。

 余談ですが,これまで国立大学は,受験生から受験機会を奪うことで,併願に伴う大学の決定的な序列化を避けてきました(受験機会が増えればどうなるかは,かつての東大京大ダブル合格者が東大に流れたことからも明らかです)。さらに税金投入によって安い授業料と高度な設備を実現し,受験生を引きつけてきました。こうして国立大学は全体としてのステータスを維持してきました。まさに「政策的に作られた」ステータスであったといえます。

 独立法人化その他の改革によって受験機会が拡大するようなことがあれば,国立大学も自由な競争に晒され,これまでのステータスが変動するのではないかと注目されます。

Q 東大2次の理科は化学の他に生物と物理のどちらを選んだ方がよいでしょうか。

A 結論から申し上げますと,迷うくらいなら物理がよいのではないでしょうか。最近物理の入試問題が特に易化しており,一方,生物の問題は,

(1)「その場で考える」タイプの実験考察問題,

(2)バイオサイエンスがらみの新機軸問題

 など,本番でのリスクが高いものになりつつあるからです。

 生物は一見暗記しさえすればよいように見えますが,実際に答案を採点してみると,「知っているはずなのに書けなかった」という人が非常に多いのに驚かされます。出題の意図に沿って縦横に知識を使いこなすのは案外難しく,多くの人が,全然関係ない事項を闇雲に並べ,的外れな答案を書いています。しかも,本人は「とにかく教科書にあることを書いたから点になるはずだ」と思い込んでいたりします。

 知識を使いこなすだけではありません。生物(や地学)選択者には微妙な概念を的確に表現する日本語力も要求されるので,論述力に自信がない人や,数式計算が得意な人は,リスク回避の意味で,生物は避けた方がいいでしょう。その他に,

(1) 生物は知識の比重が高いので,理系にありがちな「暗記の苦手な人」には向かない

(2) どういうわけか大学での生物学(専門課程も含めて)の授業の大部分が高校範囲と重複しており,物理に比べて入学前に学習することの意義が低い

(3) 高校で生物をやっていなくても,大学入学後に簡単に挽回できる

(4) 生物選択者は物理か化学のどちらかで駒場の授業についていけなくなる(要注意!)ことが非常に多い

 といったことも考えて慎重に選択すべきでしょう。

 それ以外の理由,および科目や学習方法の細かい点につきましては,入会後に詳しくご説明いたします。センターの選択科目についてもご入会後に,統計等を示した上で特定の科目選択をおすすめいたします。

Q 浪人は不利になりますか。

A たいていの有名大学で不利になると考えた方がいいでしょう。バブル期には7割程度が浪人だった早慶の合格者も,今は3割程度になってしまいました。極端な低落といえるでしょう。慶應では現役で受かって蹴ったのに一浪で落ちる人が続出します。私大合格者に占める浪人の比率が高い場合があっても,それは,

(1) 浪人の私大受験者の絶対数が多いこと(安全志向から私大専願に切り換え,また併願数が増える),

(2) 浪人に高得点者が多い(高校に行かないで済むので,勉強できる時間が圧倒的に多い)こと

 によるもので,選考において浪人有利ということではありません。特に最近は,推薦枠の急拡大により,大学側が現役を優遇したいという本音が炸裂しています。私大は,就職がすべてですから,いかにして就職に有利な現役生を獲得するかは,死活問題とも言えるのです。

 従って,一年分の学力の伸長分と,大学側が課すハンディキャップとのバランスが重要になります。

 ちなみに,東大では伝統的に,留年生には厳しい基準を適用します。たとえば,大学での定期試験では,同じ科目でも低い学年で取るよりも高い学年で取るほうが圧倒的に不利になります。低学年で取れる科目をわざわざ後に回すと,まず「優」や「A」はつかないでしょう。また,追試ではどんなに点数が高くても,単位の取れる最低の点しかつかない制度になっています。東大入試では浪人はそれほど不利にはならないようですが,教官がこのような価値観をもっていることは知っておいた方がいいと思います。

Q 理科二類から医学部医学科へ行けるものでしょうか。

A あの10人枠に入るのには何ら必然性はありません。なぜなら進振りに使われる成績は統一基準によるものではないからです。教官により採点基準が全然違うので,同じ実力の人でも,「仏(ほとけ)」の教官に当たれば満点近い点数が取れるし,「鬼」に当たれば単位を落とすこともあります。駒場の試験では同じ科目でも,教官により,授業の内容から出題される場合もあれば,全く新しい問題が出ることもあります。どの科目も「仏」ばかり,というクラスができることもあります。駒場の点数は実力とはほとんど関係ありません。従って,医学科進学はほとんど運まかせのものです。

 また,社会人入学の人で,4年計画で医学科進学を目指している人も相当数いるようですが(駒場の修業年限は4年),それで進学できるような不健全な慣行がまかり通るはずがありません。実際には留年生には厳しい基準が適用されると考えられ(上の項参照),実際,成功することはほとんどありません。保健学科からのルートについても同様に,「うまい話」はないと考えたほうがよいでしょう。

 なお,明文化されているわけではありませんが,保健学科からの場合には,学科の成績のほかに,進振りの段階でほぼ次点にいることが事実上必要のようです。

Q 早慶はどちらを選んだ方がよいのでしょうか。

A 確かに入試日程の関係で,同種の学部について早慶両方を受けるのがハードになる場合もあります。このときは,学部を変えて対処するか,次の感触により決めるのがよいでしょう。ただしこれはあくまで統計的なものものにすぎません。

(1) 同種の学部であれば慶應の方が人気が高くなりつつある(早稲田から慶應を再受験する人もかなりいるようです)。

(2) 慶應は現役生に有利であるように見える。

(3) マーク式の比重が高いほど浪人に有利に見える。

 なお,法学部に関しては,'95入試あたりから,いわゆる大手予備校の入試ランキングにははっきりと顕れないながらも,上智と早稲田が拮抗,あるいは上智の方が上位,慶應が最も高いといった感触を得ていましたが,最近のランキングではこれを裏付けるものも現れているようです。いわゆる模試のランク表は,主にその模試を受験した志望者のデータに基づいており,実際の補欠合格まで含めた難易度とは若干の相違があるように見受けられます。詳しくはご入会後にご説明いたします。

Q 早稲田は今後やばいのでしょうか。

A 一応ここは企業サイトなのでそういう質問には答えにくいのですが,附属校出身者と一般受験者の人数比・レベルの不整合や,債務問題,センターによる東大併願工作の失敗,医学部誘致の失敗,小学校開設を含む系列校の「帝国化」の遅れ……などが指摘されています。これらについては「中村忠一著『危ない大学』(三五館)」「島野清志著『危ない大学・消える大学』(エール出版)」などをご参照下さい。財務状況については,ちょっと古いですが,『週刊ダイヤモンド/1995年10月28日号』に記事があります。

 ただしこれはあくまで,外面的・制度的な部分を指しているに過ぎません。早大の出身者は実力派なので,在学生や卒業生の方が心配する必要は特にないでしょう。

前のページ - Page 3 - 次のページ

大学受験のQ&Aトップへ

© 東京凰籃学院