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Q 現在高1です。私大向けには古典や地歴など,暗記科目からはじめるのが有利でしょうか。また,その場合,どのような勉強をしたらよいでしょうか?

A これは鋭い視点だと思います。たしかに現代文のように手応えのつかみにくい科目や,英語のように時間のかかる科目よりも,手っ取り早く「合計点」を上げることができます。もちろん,私大では英語は落とせませんので,早めに並行して,英語にも根気よく取り組む必要があります。

 古典は,まずは

1 助動詞の活用・接続・意味・訳し方 2 主な助詞の意味 3 基本古語100個くらい

 をマスターし,さらにこれらを単発型の問題で確認して定着させればよいでしょう。

 地歴は,教科書がいいのですが,内容を整理してある,読みやすい,などの点では,参考書を利用してもいいと思います。旺文社や文英堂などから,「基礎からの」「基礎からよくわかる」といったようなタイトルの付いた参考書がシリーズで出ています。このクラスの本を,内容を覚えるまで読み込むのがコツです。暗記の初期段階では,詳しすぎる参考書を使ってはいけません。この他に,問題集を一冊あげればよいでしょう。

 以上で,これらの科目については,中堅私大の合格ラインに迫ることができます。ただし,当然のことですが,こういう基礎は完璧に仕上げなければなりません。

 このように書くと,なんだ,たいした量じゃないじゃないか,と思うかもしれませんが,暗記に慣れていない人がこれだけの勉強を開始するのは大変です。そこで,簡単に,暗記学習の方針を書いてみます。

  1. 重要なのは,いろいろな本に手を広げず,何度も同じ参考書を読み込むことです。
  2. 暗記は反復回数が重要です。歌謡曲を何度も聴いて知らないうちに覚えてしまうように,とにかく何度も読むことです。
  3. ただ読むだけではつまらないので,何かしら興味の焦点を自分で探し,「へー,そうなんだ」と思いながら読みます。
  4. 読むときには他のことを考えず,集中して読みます。1~2時間読んでいると疲れてきますので,気分転換し,すぐにまた勉強に入ります。
  5. 章末問題などは,いちおう自分の答えを紙に書いてから解答を見ます。

 このようにして,「ごくごく普通の勉強」を2ヶ月ぐらい続けてみてください。何らかの手応えが得られると思います。

Q 正常なPrP(C)がPrP(SC)によって同じくスクレイピー型に変わるのはなぜですか?

A 予想されたご質問です。2000年東大入試問題の生物第3問に関するものですね。

 PrP(SC)はPrP(C)と同様のアミノ酸配列をもった蛋白質でありながら,蛋白鎖の一部がαヘリックス型からβシート型へ変化した形をしており,アミロース繊維を多量に含みます。そのため蛋白分解酵素への抵抗性を示し,非溶性のアミロース斑を生成します。はじめプルシナーは,PrP(SC)が立体的に鋳型となってPrP(C)のコンフォメーション変化を引き起こし,PrP(SC)に変えるという趣旨の仮説を唱えています。

 この他に,外来プリオン蛋白が核酸を介し,細胞が新たにPrP(SC)を生産するようにしてしまうという説も提出されていますが,セントラルドクマに反すること,およびトランスジェニックマウスを用いた実験などから,最近では,直接的な相互作用だろうと考えられています。

 なお,最近プルシナーは,次のように第三の蛋白質との複合体を介して構造変化が誘起されるという説も提出しています。

 PrP(C) + ProteinX → PrP(C)*-ProteinX

 PrP(C)*-ProteinX + PrP(SC) → 2PrP(SC) + ProteinX

 このように直接的な相互作用をすると考えると,加速度的にPrP(SC)が生産されることも説明できます。ちなみに,β構造への転換は,蜘蛛の糸が作られるときにも見られると言われます。

Q 理系の研究職に就きたいのですが,できるものでしょうか?

A どんな研究職を希望するかによります。一般的に,研究職志望の人には次のような3つのタイプがあります。

1 「研究員」志望型

 教授などへの出世を強くは望まず,純粋に研究活動に従事したいという人です。こういう人にとっては,企業の研究所や公的機関にポストはかなりあると思われます。研究者のピラミッド構造を維持するために,現場研究員の需要は高いものがあります。大学では「技官」「助手」「非常勤講師」あたりがこれに当たります。

 なお,ちょっと話がそれますが,「研究所」と名の付くところだけが創造的・知的活動を行っているわけではありません。

 高校の先生でも研究活動を行っている方々はいらっしゃいます。さらに「創造的活動」というふうに考えれば,たとえば理系出身の営業マンなども,顧客のニーズを開拓すべく,データ収集を行い,それに基づいて創造的な方法を生み出している人は多いでしょう。

2 出世志望型

 有名大学の助教授,教授へとつながるコースを志望する人です。ピラミッド構造の上部なので,このポストは,決して多くはありません。大学名,成績,研究業績ともに必要になります。

 東大生で研究職志望の人の多くはこのタイプだと思われます。このタイプの人は,コースに乗れないようなら躊躇することなく民間企業への就職を選びます。

3 イメージ先行型

 特に強く興味をもつ分野があるわけでもないのに,楽そうだから,かっこいいから,という理由で志望する人です。実は,研究職志望の人の大半は,このタイプではないかと思います。

 ある分野について強い興味を持っているなら,当然,専門書などを読み,進んだ知識を身につけようという行動に出るはずです。東大受験生で,大学入学前に既に専門書を読んでいる人が多いと言われるのも,彼らが興味をおさえきれないからです。

 ところが,多くの人は,口では「○○について研究したい」と言っていても,実際には高校の範囲やテレビの特集番組程度の情報をもとに語っています。大学の研究室のHPを当たることすらしない人が多いのが現状です。しかも,大学受験に失敗して浪人すると,直ちに文転してしまう人も数多くいます。

 というわけで,自分がどのタイプなのかを考えてみてください。もちろん,地位など全く気にせず,純粋な興味を貫いて勉強するのが理想なのですが,実際には大学名や在学中の成績,人事上の系列で将来がかなり見えてしまう分野もあるので,臨機応変に進路を変更する柔軟性も必要だと思われます。

Q 大学受験は妥協します。そこで,敗者復活を目指し,出世を最優先にして進路選択をしたいと思います。どうすればよいでしょうか?

A 入試のシーズンになると,こういう生々しいご質問がかなり寄せられるのですが,非常に返答に困ります。出世が気になる理由の一つに,自分の興味ある進路があまり決まっていないことが挙げられると思います。それはつまり,情報不足ということです。いろいろな職業について本を読んでみると,具体的な進路が見えてくるのではないでしょうか。

 ここまでが,普通の回答です。

 では,「いや,興味はどうでもいい。とにかく出世できればいいんだ。自分は出世にしか興味がない」という人はどうすればいいでしょうか。こういう人の「出世」というのは,えてして「周囲から羨ましがられるような職」を指しています。

 が,ちょっと立ち止まって考えてみてください。

 「見栄」「虚飾」という価値観を優先させると,結果的に大きな代償を払うことになるかもしれません。なぜなら,興味を持てないことを延々と行うのは,拷問にも匹敵する苦痛だからです。

 大企業なら,夜の飲み会と宴会芸には,仕事よりもはるかに強い興味をもっていなければなりません。バリバリ仕事するつもりで大企業に入っても,エイリアン扱いです。

 医師の場合なら,人間嫌いで治療もぞんざい,カルテの書き方も適当で患者に不機嫌に当たるような人も多いです。また,興味がなく,見栄だけで仕事をしていると,成長も遅くなり,顧客(や患者)にも鋭く見抜かれて評価が下がり,非常に辛い毎日が待っています。

 そういうわけで,一見遠回りに見えても,まずはしっかり情報を収拾して,すこしでも仕事内容に興味を持てる分野を選ぶことをおすすめします。

Q 文系の大学生です。実力本位の会社に行きたいと思います。どういうふうに会社を選ぶといいでしょうか?

A 詳しくは,就職系のサイトや掲示板でご質問いただいたほうがいいと思いますが,いちおう何か書いてみます。

 企業によって,実力の内容が異なると思います。ただし,最大公約数的なもの,つまり対人折衝力,プレゼンテーション能力,注意力,分析力,書類・情報整理力といったものは多くの職種で必要でしょうから,学歴にこだわらずにそういった力を見てくれる企業,抜擢のある企業という方向で考えてみます。

 すると,月並みな回答ですが,新規事業に積極的な会社,商品のバージョンアップが頻繁な会社,人材引き抜きに積極的な会社ということになるのではないでしょうか。逆に,旧来の同じ製品を延々と売り続けている企業では,狭い分野の熟練者がすべてを握っているかもしれません。また,公共事業を継続的に受注し,既得権益化しているような会社は能力を求めず,「出る杭を打つ」傾向があると言われます。

 各企業の実状については,やはり大学の先輩の話を聞いてみるのがいいと思います。

 なお,社員の個人的能力に最も依存する会社の一つに,セールスを中心とする販社があります。やりがいもあれば,歩合給の部分も大きいでしょう。ところが,万一仕入元が失速し,商品のモデルチェンジが起こらず,市場が飽和してしまうと,一挙に倒産,ということにもなりかねません。

 実力主義であるということは,えてして「安定財源がない」ということでもありますので,それなりのリスクは覚悟する必要があると思います。

Q これから就職活動です。そこで質問なのですが,企業は学生の能力をちゃんと見て採用しているのでしょうか?

A これも就職系のサイトで……ということでお願いしたいのですが,いちおう書いてみます。

 応募者が多ければ門前払いが発生するのは避けられませんが,そういう場合は問題外として,たとえば面接では意外に多くの情報が得られるそうです。以下,某メーカーの人に聞いた話などを参考にしつつ記します。

 上にも書きましたように,多くの職種では対人折衝力,プレゼンテーション能力,注意力,分析力,書類・情報整理力などが必要でしょうが,面接では効率的にこれらを見ることができます。

 たとえば,月並みな例になりますが,

 「ドアの開け方や座り方が乱雑だとこまかい実験や研究には向かない」

 「玄関にあった目立つ置物が何だったか聞けば注意力や周囲に対する興味がわかる」

 「きちんとした服装は他人への思いやりやサービス精神の現れ」

 「パソコンを使えない人は,新しいことを身につけようという意欲に欠けている」

 「話し方が妙にカラ元気に思える場合,能力は伴わない」

 「抽象的な単語が多く出てくる人は知識や向上心がない」

 といった見方に面接担当者の直感を加えて即座に判断した場合,その後数年の働きぶりを見ると,多くは的中しているそうです。さらに,

 「資料請求葉書(メール)の書き方で,躾やコミュニケーション能力がわかる」

 「『頑張ります!』は『すぐあきらめます』」

 「経験や抱負より実績を語る人がいい」

 「社員を通して他社の人や地域の人が社のイメージを形成するから第一印象すら実力のうち」

 「自分をアピールできずして,社の製品をアピールできるはずがない」

 など,興味深い話が続きます。

 かくして,企業は,学生が考える以上に的確に人物を見ているようです。もちろん,判定の結果,企業側に不満があっても,人手不足のため多く採用しているところもあるようですので,それほど気にしなくてもいいと思います。

 ぜひ,大学の先輩などを訪ねていって,話を聞いてみてください。就職という実利にとどまらないおもしろさがあると思います。そして社会への興味を広げていってください。

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