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Q 国民国家とは何でしょうか?

A 教育課程の範囲で回答します。専門的なことは,その筋のサイトで質問されるなどなさってください。国民国家とは,次のようなプロセスで形成されたきわめて人工的な国家です。ここで「人工的」とは,「民族主義や文化圏よりも経済的利益を優先させる」という意味です。具体的には19世紀後半の英米仏独墺などメジャーな国を指します。ピンクの語は答案構成上のキーワードです。

1 18世紀後半以降,植民地政策による富が流入する中で中産階級が資本家に成長。

2 彼らは対外進出を国家政策として正当化するために,王権を抑えて内閣と議会の実権を奪取。

3 啓蒙思想がその理論的根拠を,市民革命が既成事実をそれぞれ与える。

4 19世紀中頃に民族主義運動や労働者階級を抑圧しつつ強力な統一政権を確立。

5 その過程で,民族構成を無視した勢力均衡による国境線が形成される。

6 第二次産業革命を通して資本家は国際金融資本に成長,これが強力な軍隊を支える。

7 生産効率を上げるため,あとから参政権拡大など一般労働者にも配慮。

8 かくして「帝国主義進出・国防という実利のもとに結集した国民」という新しい概念が成立。

 このように,今日当然のように用いられている「国民」という概念は,実は帝国主義の成長の中で人工的に形成された概念だというのが,この「国民国家」というイメージの核心です。答案としてはこういう理解が伝わればいいでしょう。日本は島国なので,この「国民」という概念の人工性をなかなか理解しづらいものです。

 ところで,上の1~8について,具体的史実を整理してみると,いろいろな事件を関連づけて覚えることができます。このように,テーマ学習というのは,生きた知識を得るために非常に有効なものです。

 このほかに,19世紀を中心とするナショナリズムの概念などは,受験世界史の最高峰のテーマとして,受験生の鬼門となっています。難関大受験生は是非とも研究しておきたいテーマです。

Q 他大学から東大の大学院(修士課程)に入るのは難しいのでしょうか?

A 院試では,大学の一般入試と違い,「学力」「実力」はあまり重要ではありません。

(1)専攻にもよりますが,専門科目の試験問題は多くが,東大の専門課程(3年と4年の前半)の講義ノートから出題されます。うっかり真面目に,専門書などで「本格的な勉強」をしてしまうと,むしろ遠回りになります。

(2)他大学出身者に関しては,概して,東大の特定の研究室と交流がある場合に受け入れます。従って,卒論時の研究室が,

 ア 東大の特定研究室に外研を派遣している

 イ 東大の特定研究室からオーバードクターを助手として受け入れている

 といったような場合に合格しやすいようです。

(3)ゆえに,他大学出身者が東大に推薦されるに当たっては,基本的には次の条件を満たしておくとよいのではないでしょうか。

 ア 大学での成績が良好で,単位不足がない

 イ 卒研で上記のような研究室に配属される

 ウ 早期に指導教官に受験の希望を伝え,感触をつかんでおく

 エ 院試の過去問の研究ぐらいはやっておく

 なお,過去問は大学の出版部などでわりと手に入ります。

Q 他大学から東大の院に行った人は将来差別されるのでしょうか?

A 不明です。以下にきわめて曖昧な書き方をしますので(笑),上の回答とこれらの記述から適宜ご想像ください。

 ア 万年助手や助教授止まりが多い(ようにみえる)

 イ 企業によっては原子力発電所などの現場に飛ばされることがある(かもしれない)

 ウ 外研を除き,他大学から来た人はその研究室に院から入るが,内部進学者はほとんどが卒論のときからいる

 エ 研究テーマには,「ダメもと」で何年もかかって気長に行われる類のものと,単にデータを追加すればよい類のものがある

 オ 大学教員の採用に当たっては,院試の成績が非常に重要であり,駒場の成績が語られることもある(かもしれない)

 カ 人事にはタイミングとギヴアンドテイクと流通経路がからむ

 キ 内部進学の院生ですら最近は医学部再受験が多い(ようにみえる)

 ク 企業は東大の看板のみを求めることがある(かもしれない)

 ケ 地方にも大学はある

 

Q 大学院大学化や大学間連携の動きがあるようですが,今後どのような影響が出るでしょうか?

A とりあえず,受験生向けの記事を意図して書きます。本格的な教育論は,やはりその筋のサイトで専門家にお訊ねください。

 大学院大学構想については,話が持ち上がってから,ゆうに十年以上過ぎており,この緩慢さから見ても,何か画期的な改革になるとは考えにくいと思います。また,単位の互換など大学間の提携関係も検討されているようですが,肝心なのは講義の内容です。

 科目選択の幅が広がるのは,学生の多様な興味に大学が応えようとしているということであり,歓迎されます。また,その結果人気教官とそうでない教官との差が明確になり,各教官が授業に工夫をこらすなど,これまで以上の努力が求められるようになることも期待されます。

 しかし実際には,よい内容の授業やゼミよりも単位を取得しやすい授業,就職実績のよいゼミに人気が集中するでしょうし,教官は授業よりも論文数を稼ぐほうに力を入れたいのが本音でしょう。そういう双方の思惑が重なって,結局これまでのような,平和な日本的大学ムラ社会が現出するのではないでしょうか。

 また研究職志望の学生にとっては,在学中の成績が非常に重要になりますので,これまた

(1)必要最小限の単位数の科目に絞って,

(2)できる限り高い点数をとる,

 という効率重視の考え方が根強く残存するでしょう。点数本位の採用が続き,優秀な学生がこのような現実的行動をとり続ける限り,「興味本位の幅広い科目選択」「幅広い教養に基づく発想力の養成」といった構想は,骨抜きになるのではないかと危惧されます。

Q 東大受験に不利な性格というのはありますか?

A 大学入試では,あまり人間性が問題になるとは思えません。従って,性格どうこうということは言えませんが,東大受験生では,たとえば次のようなタイプが危険なように思われます。あくまで一般論(つまり当学院外での観察)にして主観的印象です。

1 自己流で押し通す

 数学の証明で,結論の式までまだ数段階あり,しかも容易に導けるのに,「これは示すべき式と同値である」と結論を書いてしまう人,現代文で確信犯的に一ヶ所だけを抜き出して「ということ」を付けるだけの人,どんな小論文でも同じ主張をする人,解答欄の大きさを考慮せず極小の文字でぎっしり書く人,英語の訳で単語を無視して漠然とした内容しか書かない人,などなど。これらの人は問題集の答えを真似しようとする姿勢がないので,進歩がありません。苦手科目は絶対に勉強しない人,復習しない人も同様です。

2 日本語力・日本語の受け答えに問題がある

 漢字の書き取りがほとんどできない人,基本的な説明文が書けない人,など。たとえば,「発泡スチロールをさわるとなぜ暖かく感じるのか?」という問に対して,「保温性がいいから」と答えるタイプです(せめて,「空気がたくさん含まれていて,その空気が熱を伝えにくいから」ぐらいの説明はほしい)。この手の思考傾向をもった人は東大受験生にも多く見られます。かなり危険です。

3 進歩が止まってしまった

 何度教えられても,文字で割る場合に0かどうかチェックしない人,週に20個の英単語テストを連続4週間クリアーすることができない人,毎週同じ問題をやっても必ず同じところで同じ間違いをする人,など。有名私立高校に多く,だいたい高1ぐらいまでの問題は瞬時に解きますが,その後は全く歯が立たないので,いつごろ進歩が止まったか,かなりはっきり特定できます。それだけでなく,志望大学もまた「固定」されてしまうので,毎年同じ大学を受け,多浪します。

4 居眠り常習

 経験的に見て,これはきわめて危険です。塾や予備校で居眠りが目立つ人は,ほぼ確実に撃沈されます。現役生のA判定で落ちるケースはほとんどこれです。浪人すると反省して気合いを入れるので,何とかなるケースもあります。

5 二次で日本史選択・地学選択

 常に問題があるわけではなく,「覚えることが少なくて楽そうだから」という動機で選択される場合に問題があります。どちらの科目も,知的興味を的確にとらえて,鮮やかな文章で表現する必要があるので,そういう能力のある人を除いては,結局壁に当たります。

 現象論的にはこれらの他にもいろいろありますが,いずれも救済するためにはそれなりの技術が必要になります。

Q 東大か一橋と併願する私大はどういうところでしょうか?

A 選択の余地はあまりありません。センターで慶応法に出した上で,上智法から始まって,慶應経済・慶應法・早大法・早大政経あたりから2つほど選び,その上で,さらに安全のために慶應文・慶應商・SFC・早大商から一つ,というのが標準的です。学部に関してはばらばらで無節操ですが,私大入試では結局のところ多くの人はこういう出願行動をするでしょう。

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