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Q 現在小5です。親がつきっきりでないと勉強しません。こんな状態で大丈夫でしょうか。

A このようなケースは想像以上に不利な状況と考えられます。

 親御さんや家庭教師の先生がついていないと勉強できないようでは,小6の夏までに,勉強量や学習進度に致命的な遅れが生じていまいます。以下,その原因と対策について記します。

(1) 原因について

 中学受験は早熟な子の争いです。有名中学に受かる子の大部分は,状況把握や計画性において,中学3年生以上に冷静な判断をすることができます。「いまこれをやらなければ入試に落ちる」と判断し,合格から逆算して「彼らにとっては当然の」努力をするわけです。

 一般の小学生はこうはいきません。合格云々の前に,まず一休み,まずテレビ,まず雑誌,まず漫画,あるいは台所でいつまでも話していてぜんぜん勉強にとりかからない……というのが普通です。ちなみに極端な場合,高校生になってもこういう状況のことがあります。「親といつまでも屁理屈問答を続けていっこうに勉強しない」ケースというのは,中学受験に限らず,かなりあるようです。勉強以外の楽しみをたくさん知ってしまうと,こうなることは避けがたいと思われます。

 簡単には,「楽をしたい」というごく自然な欲求の前に敗北しているので,その時点で合否は見えているといえます。上にも書きましたが,中学受験では勉強についての主たるイメージが「苦しいもの」になってしまった時点で敗北している可能性があります。

 無理をして早熟な子のように積極的な勉強をさせようとしても,最悪の場合,ノイローゼになったりします。これで莫大な数の小学生の将来が潰されているのです。従って,まずは,しかるべき発達段階に至るまでは無理をしない,というのが原則です。

(2) 対策について

 では,無理をしない範囲でどのような対策が考えられるでしょうか。

 基本は,私立中学のよさを延々と繰り返しアピールすることです。とはいえ,なかなか小学生には理解できないのですが,ともかく繰り返し語ることによって,「じゃあ勉強しなきゃ」と思い立つ瞬間を多く積み重ねることが重要です。

 次に,教え方のおそろしく上手な家庭教師に依頼することです。

 普通,家庭教師は勉強の内容を教えるだけで,「何がおもしろいか」「これができるとどのくらい点が取れるようになるか」「今やっているタイプの問題がどの中学でどのくらい出題されているか」といった情報を伝えることができないでいます。このような付属的な情報は,想像以上に生徒のやる気をかきたてる効果があります。

 小学生の行動原理は,「成功するならやる」「失敗するならやらない」ということに尽きます。彼らは正直なので,場合によっては大人よりも計算ずくで物事に当たろうとします。

 そこで,「この問題が解けると確実に点が取れる」ということを繰り返し説得する必要が生じます。ただ繰り返すだけでは不十分で,実際に特定中学の過去問集を開いて,「ね,出てるでしょ」といって納得させなければなりません。

 このようなことも含めて,「自分で勉強しない子をやる気にさせる」には,相当に専門的・職人芸的な技術が必要です。さらに,精神衛生上の負担をできる限りかけないようにしながら勉強させるには,ほとんど芸術的といってもよい技術が必要になります。

 そのような技術をもった家庭教師の先生を探せるとよいのですが,見つからない場合には,次善の策として,ともかく教科指導力のある人に依頼するのがよいでしょう。つまり,

 ア 難問を解く「必殺技」を知り尽くし,

 イ 生徒が何をどこまでできるようになったかを把握し,

 ウ 定着するまで定期的に解法を反復確認してくれる

 ような先生です。このような教え方をすれば,勉強時間の不足分をかなり補うことができます。

(3) 今後の学習について

 というわけで,自分で勉強できない生徒さんが中学受験をする場合,家庭教師は必須になります。

 小5段階では基本事項の習得が重要ですので,家庭教師の先生はまじめで,かつできる限り時給を安くできる学生さんでいいと思います。具体的には明治大あたりに求人を出すなどの方法が考えられます。最低限生徒さんと一緒になって雑談に走らないような人であればよいでしょう。私大の学生さんであれば夏休などが長いので,勉強を見てもらう時間を増やすなど,柔軟な対処が期待できます。

 小6になってからは,上記のような実力のある先生に見てもらった方が安心です。受験学年の家庭教師は,厳重に人選をすべきです。

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