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Q バイオ系の人気が下がりつつあると聞いたのですが,僕は分子生物学にとても興味を持っています。何か理由があるのでしょうか?

A 例によって多少過激な書き方になりますがご了承ください(笑)。

 いわゆるバイオサイエンスそのものはますます進展しているように思われるにもかかわらず,そのように言われる背景には,次のような状況が考えられます。

 まず,理学系・農学系バイオ関連学科からの就職がやや低調になってきたことがあります。遺伝子を扱う研究は地道で試行回数が多く手間がかかる上に,商品化までの距離が長く,さらに最近遺伝子組み替え食品の安全性に市場が敏感になっています。その割には医薬品に見られるような制度化された販売機構がありません。そして何より,実験・測定の自動化が進んで「肉体労働者としての研究員」への需要が低下したといわれます。

 では研究面ではどうでしょうか。分子遺伝学を学びたいと思う人が最終的に興味を持つのは「生命の神秘」,そして対象はやはりヒトです。ところが,ヒトに関しては,様々な規制から,医学部に持って行かれてしまいます。しかも医学には治療という大きな現実的目標があるので,真理探究を目的とする理学系と比べ,実用を念頭に置いた使命感や緊張感が味わえます。そして成果を人体に応用するチャンスすら巡ってきます。

 一方理学系では当然のことながらヒトにほとんど手を出せず,医学部との共同研究という形をとらざるをえません。近年の生物学は細胞レベルの理解へと移行していますが,高等動物になるほど,卵の扱いなどを含めて様々な倫理的拘束を受けます。そこで現実問題として,バイオ関連学科では分子動力学など物質レベルに留まり,コンピュータ計算との整合性をとりつつ詳しい探求を進めるといった方向で進んでいるようです。

 もちろん,まだまだ物質レベルでの発見は続くでしょうし,興味の尽きない分野なのですが,医学部と比べて地味であることは否定できません。そのようなイメージのみでバイオ関連学科が医学部と比較されるのは非常に残念なことです。

 なお,よく言われることですが,バイオ関連学科に進んでも分子生物学ばかり勉強せず,有機化学や量子化学など基礎的な科目は広くしっかり学んでおくと,将来的に応用の幅が広がると思います。また,入門書のような通俗的な本を読んで専門分野に興味を持っても,実際に専門書を読んでみたり,大学で卒業研究をしてみると,期待に反して非常に地道な世界だったりしますので,いろいろ情報を集めてみるとよいと思います。少なくとも,受験産業が行うような「興味を引き出す授業」を大学に期待するのは,現状ではほとんど不可能でしょう。

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