Q 理工系学部では物理学科の偏差値が高いですが,なにか理由があるのでしょうか?
A このほかに,「東大で物理学科の進振りの点数が異様に高いのはなぜか」といったタイプのご質問をいくつかいただいております。
物理学は大変魅力的な学問です。哲学的な感性と論理力,そして数学的な直観を駆使して世界を説明しようとする物理学は,「究極の自然科学」と呼べるかもしれません。しかしながら,そういうことをわかって志望している受験生は少数と思われます。現状では,物理学科の人気は多分に,情報不足と既成事実によるものと思われます。
最も大きいのはやはり「一貫して点数が高い」という点でしょうか。これまで点数の世界で生きてきた受験生は,学科の社会的評価よりも点数で判断することが多いように思われます。実際には,物理学科からの民間就職は工学系に比べて相当に厳しくなります。ただし,東大の物理学科に関しては大学教員のシェアをかなり確保しているようです。
理論物理に惹かれていても,実際には物理学は実験の連続です。データをもって証明しないと論文になりません。その実験は,基礎的であるために,「超高圧」「超高電圧」「超低頻度現象」など,極端な環境での測定が主流になりますので,実験設備も大掛かりなものになります。そのため,学生の人数に比して設備が少なく,順番待ちとなることがあります。
半導体やレーザー・超電導など話題性のある研究はどちらかというと,工学系学部にもっていかれてしまいます。こういう分野では理論的な事後的説明よりも,マテリアルの合成技術やパフォーマンスが先行するからです。さらに,実験設備は民間企業の電子・機械工学系の人が作ったものなので,計測を主眼とする実験データのうちめぼしいものは機器購入の時点で既に企業に取られていたりします。
近年の理学系物理学科の研究の流れとしては,境界領域への進出があります。たとえば量子化学です。これは,有機化合物・金属触媒・酵素・生理活性物質などの分子軌道をコンピュータでシミュレートして機能を説明しようとするもので,端的に言えば,生物・化学系で普通に行われている分野へと進出しているといえます。
なお,過激な言い方になりますが,日本の理工系学部から出てくる研究成果の多くは,企業で既に数十年以上前に行われ,闇へと葬られたデータだといっても過言ではありません。米国の大学が企業の研究をそのまま(研究者ごと)誘致しようとするのと対照的です。
そんなわけで,学科選びの際にはその学科の院生レベルの人に情報をもらうのがよいと思われます。研究室を訪ねていってもいいと思います。理工系の研究室は暗く汚いことが多いので,カルチャーショックに陥らないよう念願します(笑)。
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